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校外学習 動物園⑥

Author: 緋村燐
last update Huling Na-update: 2025-08-09 17:31:20

 知り合い、なのかな?

 でもどっちと?

 男の人はオシャレ、と言えば聞こえはいいけれど、ピアスをいくつもつけていたり歩き方などの仕草が不良っぽい。

 対して女の人はシンプルなワンピースにカーディガンを羽織っていて、一見質素に見えるけれど彼女の容姿の華やかさが逆に際立っている。

 メイクが控えめなのは、妊娠中だからなのか。

 そんな風についつい見つめてしまっていると、男性の方があたし達に気付いた。

「オイ、お前ら何見てんだぁ?」

 ガラが悪い。

 メンチを切るとはこんな感じじゃなかろうか、と思いながらあたしはつい陸斗くんの袖にしがみ付いた。

 でも当の陸斗くんは怯えるでも、ケンカを買うでもなく、喜色の笑顔で彼に声を掛ける。

「早瀬さん! ケガ治ったんすか!?」

「は?」

 予想外の反応に男性の方が眉を寄せて訝(いぶか)しむ。

 陸斗くんは片手でメガネを外し、器用に髪をかき上げた。

「俺っす。陸斗です」

 嬉しそうに名乗った陸斗くんに、早瀬さんと呼ばれた男の人がこれでもかというほどに目を見開く。

「は? 陸斗? お前学校は? っていうか何でそんなカッコしてんだよ?」

 早瀬さんの方も喜びの表情になる。

 笑うとそこまで怖くはなかった。

「校外学習ってやつですよ。この格好は……まあ、カモフラージュというか……」

 そんな風に答えている陸斗くんはまるで尻尾を振っているワンコみたいで……。

 何だかちょっと可愛かった。

「……陸斗くん、あたし離れてようか?」

 知り合いらしい人との再会に、あたしがいても良いんだろうかと思ってそう聞いてみる。

 でも、陸斗くんは「いや」と言って掴んでいる手に力を込めた。

「何だ陸斗? その地味な女は。
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